「AIを入れたいとは思うが、何から任せればいいか分からない」。経営者の方から、いちばんよく聞く言葉です。

私たちの答えは決まっています。転記・照合・下書きの3つから探してください。どんな会社にもある、時間はかかるのに価値を生んでいない仕事の3分類です。

転記 — 同じ情報を、人の手で移し替える

FAXやメールで届いた注文を、基幹システムに打ち直す。紙の日報をExcelに入力する。名刺の情報を顧客台帳に写す。

共通しているのは、情報が何も増えていないことです。すでにどこかに書いてあることを、別の場所へ運んでいるだけ。それなのに人の手と時間が使われています。

照合 — 2つが合っているか、目で確かめる

発注書と納品書の数量。請求額と入金額。在庫台帳と現物の数。見積書と仕様書の内容。

この仕事のつらいところは、神経を使う割に、うまくいった結果が「合っていました」で終わることです。何かを生み出したわけではないのに、間違えれば大ごとになる。だから丁寧にやるしかなく、丁寧にやるほど時間が消えます。

下書き — ゼロから文章の形にする

見積の説明文。会議の議事録。月次の報告書。問い合わせへの返信。

書き上がったものを読んで手を入れる時間より、白紙から文章の形にするまでの時間のほうがずっと長い。頭を使うのは最後の判断だけなのに、そこにたどり着くまでの「形にする」作業が大半を占めています。

なぜこの3つなのか — 「得意」ではなく「安全」

転記・照合・下書きを挙げる理由は、AIがこれらを得意だから、ではありません。間違えても安全だからです。

転記の結果は、元の書類と見比べればすぐ分かります。照合の結果は、AIが「ここが合っていません」と出してきた箇所を人が確かめればいい。下書きは、直せば済みます。つまり3つとも、結果を人が見れば、正しいかどうかがその場で分かる仕事です。

逆に、判断そのものは渡しません。この客に売るか。この価格で受けるか。この返事を送るか。間違いに後から気づいても取り消せない仕事は、AIの精度がどれだけ上がっても人の側に残します。この線引きの考え方は「AIには、下書きまでを任せる」に詳しく書きました。

「人が減る」のではなく、「この3つが減る」

AI導入の話には、「社員の仕事が奪われるのでは」という心配がついてきます。

実際に減るのは人ではなく、転記・照合・下書きに消えていた時間です。そして地方の中小企業でいま起きているのは、人が余ることではなく、募集しても人が来ないことのほうではないでしょうか。採用できなかった1人分の穴を、この3つの自動化で埋める。私たちはそういう順番で考えています。

探し方は、3つの質問だけ

業務フロー図を広げる必要はありません。この3つを現場に持っていくだけです。

  • 同じ数字を、二度打っている場面はありませんか
  • 2枚の書類を並べて、目で見比べている場面はありませんか
  • 毎回ゼロから書き起こしている文章はありませんか

たいてい、誰かがすぐに具体例を出してくれます。それが最初にAIへ任せる仕事です。まずは一つの業務、一枚の帳票から。道具の側の話は「チャットAIと、仕事を任せるAIは別物」に書いています。